主な研究テーマ

宇宙機・航空機の運動と制御


月惑星探査のための探査機の着陸機構とその制御に関する研究

次世代の月惑星探査ミッションにおいて,月や火星へ着陸し天体表面を探査することは,極めて重要となっています.科学的に大変興味深い探査候補地(クレーターの中央丘やリム上,縦穴や渓谷など)の多くは,地形が急峻なため着地に対する難易度が高くなっています.今後の探査の実現には,これら厳しい条件下での探査機の転倒防止が大きな課題となっています.
本研究グループでは,着陸時の衝撃吸収や転倒防止において運動量交換やエネルギー変換の観点に着目し,さまざまな方式の着陸機構とその制御に関する研究を行っています.

実験機概観
シミュレーション
  • 原・杉田・齋藤・前田・大槻「3次元エネルギー直動回転変換機構の自由落下着陸実験とシミュレーション」,第17回宇宙科学シンポジウム, P-176 (2016)
  • Susumu Hara, Satoshi Saito, Keisuke Sugita and Takao Maeda, Planetary Exploration Spacecraft Landing Gear with Three-Dimensional Linear-Rotary-Energy-Conversion Mechanism, The 31st International Symposium on Space Technology and Science, 2017-k-36 (2017)
  • Takao Maeda, Takeshi Ozaki, Susumu Hara and Shintaro Matsui, Touchdown Dynamics of a Planetary Lander with a Translation-Rotation Motion Conversion Mechanism, Journal of Spacecraft and Rockets, Vol. 54, Issue 4, pp. 973-980 (2017)
  • 前田・原・尾崎・松井・大槻「並進回転運動変換機構を用いた月惑星着陸機の転倒抑制」,計測自動制御学会論文集,53巻5号, pp. 319-326 (2017)

飛翔体制御に関する研究

近年台頭してきた無人航空機は,物資輸送をはじめとした様々なミッションへの適用が期待されています.特に,滑走路が無い離島間の輸送や,より広範囲かつ高精度な環境観測などの実現には,ヘリコプターのような空中静止能力と旅客機のような高速飛行能力を併せ持つことが望まれます.
垂直離着陸機はそれを実現する機体として注目されており,本研究ではその中でもTilt-Wing機と呼ばれる機体を対象に研究を行っています.この機体はプロペラを装備した翼全体の角度を変更(Tilt : ティルト)することで空中静止と高速飛行を実現します.しかし,飛行中に機体の運動特性が大きく変わるため,飛行安定化が難しいという問題があります.
本研究は制御工学の観点からこの問題に取り組みます.「吸引領域」と呼ばれる安定化を評価する新しい指標を取り入れ,制御則および機体構造を「制御しやすい」ように同時に最適化することで,安定飛行の実現を目指します.

研究概念
  • 中村・堀部・原・椿野「吸引領域の定量的評価に基づくQuad Tilt-Wing機の設計パラメータ最適化」,日本航空宇宙学会第53回中部・関西支部合同秋期大会,D10 (2016)
  • 原・永松・中村・堀部・椿野「4発ティルトウィングUAVの飛行制御と吸引領域による安定性評価」,日本航空宇宙学会第48期年会講演会,1C08 (2016)

電動ビークルの運動制御に関する研究

電気自動車を始めとする電動ビークルの課題の一つは,真に効率的なバッテリ運用です.従来はバッテリの状態量がわからないことから保守的な運用をしており,その能力を生かし切ることができていませんでした. しかし近年,数理モデルを用いたバッテリ状態の推定法が開発されており, 高い精度でバッテリ情報を知ることができるようになりました. 本研究グループでは,このような最新のバッテリマネジメント技術を積極的に考慮した 電動ビークルの運動制御について研究しています. 電動ビークルの中でも特にペイロードの制約が厳しくバッテリ搭載量に制限がある無人航空機の分野において, ソフトウェアの改良のみによる大幅な航続距離の延長を目指しています.

研究概念
  • Koya Kuwamura and Susumu Hara,Application of Battery Information to Effective Unmanned Aerial Vehicle Control,日本機械学会東海支部第 66 期総会・講演会,322 (2017)

水平移動体の静止制御に関する研究

下図のビリヤードの例では,左端の玉が保有する運動量が中央の玉を介して右端の玉に伝わり,右端の玉が打ち出され, 左端の玉が静止します.本研究ではこのような運動量交換を主体として,ブレーキを極力使用せずに水平移動体を静止させることを目指しています.この手法を物品搬送などに応用することにより,搬送時間の短縮やエネルギーの有効利用などの効果を得ることが期待されます.
本研究グループが着陸探査機の分野で提案してきた機構と制御を応用して,水平移動体を壁に衝突させることを仮定し,リバウンド抑制・静止を実現する機構に関する研究を行っています.

ビリヤードの原理
シミュレーションモデル
  • 原・三島・桑村「運動量交換を主体とした水平移動体静止制御機構の提案 -パッシブMEIDによる減速とアクティブMEIDによるリバウンド抑制のハイブリッド機構- 」,第17回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会,1209-1212 (2016)

高効率運用を実現するための宇宙機自律化システムの提案


近年,開発期間が短く費用対効果が高いという特徴から超小型人工衛星の研究開発が国内外で活発化しています.しかし,小型・軽量であるため搭載可能なリソースが限られています. さらに現状では,宇宙機全体の安定運用を最優先し保有リソースに対し過剰な安全余裕を持つ保守的な機器運用を行う傾向もあり,これらがシステムの高度化を妨げています.
本研究では限られたリソースを最大限に活用可能にする自動化・自律化機能を実装し超小型人工衛星のシステム高度化を目指しています. 現在は特に衛星の電源管理に着目し,バッテリの状態推定と運用計画を組合せ,機上で自律的な判断を実現することによるミッション運用時間の最大化を検討しています.

バッテリ試験系
シミュレーション条件モデル
  • 高木・宮田・山口・原「低軌道周回型超小型人工衛星に特化した効率的運用手法の提案」,第18回宇宙科学シンポジウム,P-162 (2018)
  • 高木・宮田・山口・原「超小型人工衛星の効率的な運用を目的としたバッテリ状態に基づく電源管理に関する一研究」,日本航空宇宙学会第49期年会講演会,1D07 (2018)

Impact Geometry Map を用いた小惑星衝突機の軌道最適化手法に関する研究


小惑星の地球衝突は,発生頻度は少ないものの人間社会に甚大な被害を及ぼす自然災害です.この災害に対して,小惑星の軌道を変えることで地球衝突を回避することが検討されています.小惑星の軌道変更手法に関する研究は国内では珍しく,まだまだ発展途上です.
軌道変更手法の1つに,宇宙機を小惑星へと衝突させることで軌道を変えるKinetic Impactor(KI)が提案されています.KIは,実際に彗星に衝突体を打ち込んだ例もあることからも高い実現可能性をもつとされていますが,宇宙機の衝突効果に着目することでさらなる効率化が期待できます.
宇宙機の衝突効果の評価に関して,KIにより達成可能な小惑星軌道エネルギー変化を可視化したImpact Geometry Map(IGM)と呼ばれる解析図が考案されています.IGMを利用することにより衝突効果の大きい軌道へと宇宙機を投入することが可能です.
本研究ではIGMを利用することで,衝突効果を増大するための軌道最適化アルゴリズムを提案し,KIの効率を向上させることを目指しています.

Mission Overview
Impact Geometry Map(IGM)
  • 羽山・山口・原「インパクトジオメトリ解析を用いた小惑星衝突機の軌道変更手法に関する研究」,第26回スペース・エンジニアリング・コンファレンス,1A2 (2017)
 

複雑ダイナミクスと制御理論

Complex Dynamics and Control Theory (CDCT)

以下の研究テーマは講師の椿野とその指導学生によって行われています.お問い合わせは椿野までお願いいたします.

連続体現象の制御

液体燃料タンク内における燃料の振動や物体周りの流れ場で生じる現象,さらには人工衛星における太陽電池パドルや膜構造体の振動といった弾性体で生じる現象は,その動特性が偏微分方程式によってモデル化されます.その結果,制御対象としては非常に扱いにくいものになり,その制御手法について多くの課題が残されています.この困難な問題に対して我々のグループでは,物理的な性質や状態変換,機械学習をうまく用いた系統的な制御器設計法について研究しています.

弾性振動,流体現象のフィードバック制御

複数移動体に対する自律協調制御

複数の人工衛星,航空機,車両などの移動体に対して,個々の移動体が周囲と協調しながら自律的に目標を達成するために,どのように行動すれば良いかの意思決定を行うための方法論を研究しています.特に,集団としての舞いに対する評価と,個々の移動体の運動の評価のように,システム全体に階層的な評価を導入した,階層化最適制御論を用いたアプローチを採用しています.複数の人工衛星のフォーメーションフライトを用いたミッションや,複数無人航空機,複数ローバによる科学観測や探査などへの応用を目指しています.

人工衛星,無人航空機,自律車両の協調制御

無人固定翼航空機の制御

小型無人航空機は,人が乗っていないことや人が操縦しないこと,さらには軽量であることから通常の旅客機にない多くの可能性を秘めています.我々の研究グループでは,長い航続距離を生かしつつ様々なミッションが可能となるように,固定翼航空機の可能性を広げることを目指します.制御がより主体的になる新しい機体形状の設計や,非線形制御を代表とする最先端の制御理論を駆使した,従来にない飛行形態の実現に向けて,研究を進めています.

Tail-Sitter 型航空機